遺伝性脱髄疾患の1つにgalactosylceramidase Iが欠損しているKrabbe病(GLD)がある。我々はこの10年間本疾患の病態に関して研究を行ってきており、galactosylceramideの分解は2つの酵素で触媒され、そのうちgalactosylceramidase IのみがGLDで欠損し、galactosylceramidase IIは正常であることを報告した。この結果ヒト及びマウスGLDでgalactosylceramideは蓄積せず、galactosylsphingosineのみが蓄積することを明らかにした。蓄積したgalactosylsphingosineは細胞毒であるため、ミエリン形成細胞であるオリゴデンドログリアやシュワン細胞が死滅し、脱髄が起こると考えられる。今回の研究目的は欠損酵素の分子生物学的特徴を明らかにすることである。本酵素は精製が困難で、いままで精製されていなかったため平成2年度はヒト胎盤より種々の方法を用いて約10000倍に精製を行った。最終産物はSDSーPAGEで分子量約58000と20000の2本の主要バンドが見られた。それぞれの蛋白質を切り出し、そのままの形やendopeptidaseで切断の後、アミノ酸配列を部分的に決定したところ、58kDのバンドはIgGとアミノ酸配列が同一であることが判明し、20kDのバンドはアミノ酸配列が認めなかった。そこで平成3年度は比活性が比較的が高いブタの腎臓より平成2年度で行った方法を改良し、約20000倍まで精製を行った。しかし、最終産物はSDSーPAGEで単一のバンドとはならず、54kDの他に数個の薄いバンドがあるため、54kDのバンドをブロッチングの後切り出し、N末端のアミノ酸配列を検索したところ11個の連続した配列が決定され、その配列はコンピュウタ-にて全く新しいペプチドの可能性が示唆された。現在、endopeptidase処理したペプチド断片を分析中である。また、N末端アミノ酸配列をもとにPCRを用いて、ブタ腎臓より作成したcDNAライブラリ-を鋳型にcDNAクロ-ニングを開始している。
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