研究概要 |
遺伝性筋疾患に対する筋芽細胞移植による治療の検討を行った。モデル動物としてmdxマウスを対象とした。ホストであるmdxマウス骨格筋における導入された正常遺伝子の発現は、dystrophinの免疫染色により検出できる。方法として、培養筋芽細胞をホスト前けい骨筋に注入する。またdonorの細切筋片を筋肉内に植込む方法も試みた。結果として、(1) 培養筋芽細胞注入によると、移植側におけるdyotrophin陽性筋線維数は、1-5個(n=6,平均2.3個)であった。にせ注射(sham injection)による対照側では0-2個(n=6,平均1.0個)であった。(2) 細切節片の移植によると、移植側のdystrophin陽性筋線維数は、2-16個(n=3,平均11.2個)と若干の増加をみた。 考察とまとめ 今回の実験において、dystrophin陽性となった筋線維は前けい筋全体の1%弱にとどまった。治療的効果を期待するには、低値に過ぎるであろう。筋芽細胞の生着率に影響する因子として、i)ホストの拒絶反応、ii)注入ないし移植される筋芽細胞数、iii)筋芽細胞の分裂能(viability)などが挙られる。我々は移植後にcyclasporinAを投与して、その効果を分析した。しかし生着率を改善しなかった。筋組織の検討では、炎症細胞浸潤は筋切片移植の方が多く、拒絶反応も強かったと推定される。文献上ではヌードマウスへの移植あるいは全身X線照射後の移植ではdystrophin陽性率は高い。したがって拒絶反応は今後の重要な課題と思われる。培養細胞と細切筋片移植との比較では、後者で陽性率は高い。この理由の1つとして筋芽細胞のviabilityの関与を推定している。この点も今後の検討課題であろう。
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