研究概要 |
1.内膜傷害後の冠動脈の反応性変化 ゲッチンゲン種ミニ豚の左冠動脈内膜をバル-ンカテ-テルで剥離した後、無作為に5群に分け、冠動脈造影法を用いて冠動脈内径の経時変化を評価した。対照群では5分後に56±5%狭窄し約30分で寛解した。ヘパリン3000単位前投与群,アスピリン50mg/日2日間前投与群,ケタンセリン1mg/kg前投与群,アスピリン50mg/日(2日),ヘパリン6000単位ケタンセリン1mg/kg前投与群における自然発生狭窄率はそれぞれ,28±6,23±5,26±7,24±5%と有意に減弱した。以上の成績から,内膜傷害後に生じる冠動脈収縮において,血小板依存性及び非依存性機序が同程度関与していること,血小板による収縮にはセロトニン-2受容体が関与していることが明らかになった。 冠動脈狭窄と血管反応性については傷害前,一週間及び一ヵ月後に検討した。内膜傷害部の狭窄度は一週間後17±2%と増強していたが,一か月後狭窄は消失した。一週間後に認められた狭窄を形態学的に検討した所、内膜と中膜が肥厚していた。一週間後,セロトニンを冠動脈内に注入すると冠攣縮を誘発し得たが,一か月後には同様の現象を認めなかった。すなわち,冠動脈狭窄の進展・消退とセロトニン反応性の消長とは密接に関連していると考えられた。 2.器質的冠動脈狭窄部のバル-ンによる拡大と血管反応性の変化 ミニ豚を高コレステロ-ル食で飼育し、1か月後左冠動脈の内膜剥離を行い、さらに1か月後同部にX線を照射し器質的狭窄病変を作製した。2か月後冠攣縮部を6気圧(A群)と1気圧(B群)でPTCA(経皮的血行再建術)を行った。A群ではPTCA後セロトニンに対する過剰収縮反応が消失した。B群では血管反応性は温存されていた。これらの成績は高圧によって収縮系に不可逆性の損傷が生じたことを意味する。
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