研究概要 |
虚血性心臓病患者の生活の質を根本的に改善する手法としてPTCA(経皮経管冠動脈形成術)やCABG(冠動脈バイパス術)が開発された。PTCAは手術侵襲を必要としない利点があり、バル-ンによる開大、レ-ザ-による形成、粥腫切除法と様々の手法が開発されている。いずれの方法も30ー50%の高頻度に再狭窄が生じることから、同一の患者に複数回PTCAが施行される状況に至っている。本研究では再狭窄の出現機序をゲッチンゲン種ミニ豚について検討した。内腔の機能的狭窄と器質的狭窄の経時変化を冠動脈造影法を用いて識別定量化し,以下の成績を得た。 (1),冠動脈内膜剥離に伴う血管反応性の変化:ゲッチンゲン種ミニ豚を2%コレステロ-ルとコ-ル酸を含む動脈硬化食で飼育し,1ヶ月後(血清コレステロ-ル値400mg/dl前後),冠動脈にバル-ンカテ-テルを挿入し内膜を機械的に剥離した。漸増する内腔の自発性狭窄が出現し、5分でピ-ク値を、30分後には剥離前の内径に復帰した。本現象はヘパリンやケタンセリンの前投与により60%狭窄から30%狭窄に抑制された。 自発性温剰狭窄が自然に寛解した後,30分,1日,1週,2週,4週後に冠カテを行い,ヒスタミンやセロトニンに対する血管反応性を調べた。2週後迄はセロトニンに過剰に反応し80〜90%の内腫狭窄を生じたが4週後は狭窄反応性が減弱した。 (2),X線照射による血管反応性と組織形態の変化:2日後セロトニンに対し過剰に反応し始めその過敏性は数ヶ月持続した。内膜肥厚は4週から認めた (3)PTCAの効果:内膜剥離から3ヶ月後2週間隔で入線(1500ラド)を剥離部に限局照射した。さらに3ヶ月同部に器質的狭窄と過剰反応性があることを確認後PTCAを行った。PTCAによってセロトニン過敏性は減弱した。組織学的には複数の層によって構成される内膜肥厚を認めた。
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