研究概要 |
虚血心筋に対するcoronary sinus retroinfusion法の効果を検討するために、以下の実験を行った。対象及び方法:雑種成犬37頭に対し、麻酔、閉胸下で左冠動脈前下行枝を血管形成術用バルーンカテーテルにて閉塞し心筋虚血を作成した。冠閉塞30分後に以下の4群に分け、血行動態、血中および心筋組織内diltiazem濃度、心筋壊死量について検討した。A群)コントロール群として、未治療下に3時間の冠閉塞を行った(n=5)。B群)冠閉塞下でdiltiazem3mug/kg/minを3時間持続静注を行った(n=9)。C群)synchronized retroperfusion法(SRP)を開始するとともに同量のdiltiazemの持続静注を3時間行った。(n=8)。D群)SRPを開始し、同量のdiltiazemをSRPシステムの体外循環部へ持続注入(retroinfusion)した(n=9)。結果:血行動態上、diltiazemを使用した3群(B,C,D)では、A群に比し、経時的な心拍数の減少、左室拡張終期圧の上昇の抑制が認められた。血圧、肺動脈圧、心拍出量に関しては、群間差を認めなかった。血中(ng/ml)、および虚血部(I)、非虚血部(N)の心内膜側(End)、外膜側(Epi)(ng/ml)のdiltiazem濃度は(*p<0.05 vs B and C)(±SE) (].HY.[) と、虚血部でD群が有意に高値を示した。虚血部に対する心筋梗塞巣の大きさはA群77.5±2.5%、B群78.9±7.6%、C群52.7±5.9%、D群43.2±3.1%(平均ISE)と、、D群はA,B群に比し有意に小であった。以上の結果より、SRP法にdiltiazemの冠静脈内投与を行うことによりdiltiazemの虚血心筋内濃度を高め、心筋壊死を縮小させうると思われた。
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