研究概要 |
1)圧負荷心肥大時の心筋内catocholamine,lP_3,protein kinase G(PKG)の局所反応 stretchやcatecholamine刺激による心肥大発生時にはIP_3-PKC系が活性化され、収縮蛋白の合成やisoform変換を誘導する。そこでWistar rata,SHRに腹部大動脈狭窄(AC)を行い、圧負荷時の情報伝達系の局所反応を検討した。心筋内norepinephrine濃度は交感神経分布と一致して左室自由壁〉心室中隔〉心尖部の順に高く、AC後にもその分布は変化しなかった。心筋IP_3はsham ratsではWistar,SHR共に局所差はなかった。AC後にWisterでは変化はなかったが、SHRでは中隔、自由壁のIP_3は低下し、心尖部では不変であった。心筋内PKC活性はWistarでは心尖部で低値でAC後減少傾向を示した。一方SHRでは心尖部、中隔部のPKC活性がAC後に増加した。この様に心臓の交感神経分布に局所差があり、この為に特にSHRでは圧負荷時のIP_3-PKC活性化が心尖部に強く認められ、心尖部肥大型心筋症の機序を考える上で興味ある所見と思われた。 2)圧負荷心における骨格筋アクチンm-RNAの部位別発現様式 骨格筋アクチン(s-ACT)は胎児型isoform)であるが、圧負荷心肥大時に再発現する。そこでprimer extension法を用いた腹部大動脈狭窄ラットのs-ACT m-RNAの局所発現様式を検討した。圧負荷6時間後よりs-ACT mRNAの発現がみられ、これは心外膜側よりも心内膜側で強く(sham群との発現比:5.6vs1.8)、また心基部よりも心尖部で強く認められた(6.4vs4.8)。この様なs-ACT mRNAの局所差は負荷時の心筋内stress分布あるいは神経分布や細胞内情報伝達系の局所差に対応するものと思われるが、この為に心尖部では強い肥大反応を示す可能性が示唆され、心尖部肥大型心筋症の成因と関連した興味ある所見であった。
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