研究概要 |
血管平滑筋細胞の増殖に対するアンジオテンシンII,ブラジキニン,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル)および内皮細胞の共培養、内皮細胞培養上清添加の影響を調べた。 増殖の指標としてはDNA含有量を用いた。 1.材料としてブタ大動脈由来の平滑筋細胞および内皮細胞を用いた。この平滑筋細胞は形態的に“丘の谷"配列を呈し、アンジオテンシンII受容体(Kd=5.4nM)を有しており、浮遊細胞の状態でアンジオテンシンIIまたはブラジキニンにより遊離Caの上昇が見られた。内皮細胞は特徴的敷石状配列を呈した。 2.平滑筋の増殖能はアンジオテンシンII(100nM)、ブラジキニン(100nM)またはカプトプリル(1μM)の存在下、非存在下で差がなかった。 3.トランスウェルを用い上層に単層培養内皮細胞存在下で下層に平滑筋細胞を培養すると、増殖が促進された。 また上層、下層何れかにアンジオテンシンII、ブラジキニン、カプトプリルを添加しても増殖能には影響を及ぼさなかった。 4.内皮細胞を播種後、無血清培地で2日間培養を続けその上清を平滑筋培地に添加したところ、用量依存性にその増殖を促進した。この内皮細胞培養上清を50%の濃度で添加したときの増殖促進作用は10%ウシ胎児血清添加による促進能の約50%程度であった。 この促進作用に対してもアンジオテンシンII、ブラジキニン、カプトプリルは影響を及ぼさなかった。 5.内皮細胞培養上清中の増殖促進因子は分子量5万以上と推定され、熱処理で完全に失活し、トリプシンにより部分的に不活性化された。
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