研究概要 |
1.HLA抗原とIDDM:血清学的に同定されるHLAーDQ抗原と最も強く相関することはすでに報告した.HLAーDQB1,A1,DRB1との相関をRLFPで検討したところ,何れの遺伝子座共にBamH1制限酵素断片と正または負に相関することが明らかになった.2.IDDM患者及び対象のHLA抗原遺伝子解析:疾患感受性として重要なHLAーDQB1,A1,DRB1,57番目アミノ酸組成をPCR法にて増幅し,合成ASOプロ-ブにより同定した.IDDM患者ではDRB1の57番目アミノ酸は非アスパラギン酸が多く,一方DQB1の57番目はアスパラギン酸が多かった.これは白人の組成と異なっていることが確認された.DQA1遺伝子の組成と疾患感受性との検討ではDQA1 76番目のアミノ酸組成が重要であることが明かとなった.即ちこれがロイシンの時には相関がなく,非ロイシン即ちメチオニンまたはバリンの時,本症と正の相関を示すことが明かとなった.3.HLA抗原以外の遺伝子とIDDMの相関:T細胞受容体遺伝子,インスリン遺伝子,Thyー1遺伝子と本症の相関を,主にRLFP法にて検討したが明らかに相関する遺伝子断片は見つからなかった.4.レプリコニズムの1例のインスリン受容体,受容体遺伝子の解析:典型的なレプリコニズムの1例を経験した.内因性インスリン値は著しく高く、外因性インスリンに抵抗を示した.EB virus不死化リンパ球によるインスリン結合能は著しく低下していた.リンパ球よりDNAを抽出し,インスリン受容体cDNAをプロ-ブにして,種々の制限酵素を用いてRLFP解析を行った.この結果,exon4,5の一部を含む1.3kbの欠失を有する,α鎖の構造異常を伴っていた.この遺伝子異常は母親由来であるが,母親に糖尿病を認めないことより今後この異常の意義の解明が必要である.5.DERIおよびDIAMOND研究:NIHおよびWHOの研究費による国際共同研究は順調に進み,多くの成果が得られ,1999年まで継続される.
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