研究概要 |
昨年まで本研究の代表研究者であった松浦信夫が研究年度半ばで退職し,梶井直文,藤枝憲二がその後を引き継いでいる.松浦信夫及び共同研究者は連携を取り合って本研究を遂行している。 1.HLA抗原とIDDM:血清学的に同定されるHLAーDQ抗原と相関,HLAーDQB1,A1,DRB1遺伝子の制限酵素断片のRFLPについては昨年報告した.2.IDDM患者及び対象のHLA抗原遺伝子解析:この点についても昨年報告し,HLAーDRB1,57番目のアミノ酸が非アスパラギン酸,DQA1,76番目のアミノ酸が非ロイシンが疾患感受性を規定しており,これは白人の組成と異なっていることが確認された.この違いの説明として,白人ではHLAーDQB1,DQA1遺伝子によって規定されるDQ抗原分子が疾患感受性を規定しているのに対し,日本人ではHLAーDRB1,DQA1遺伝子により規定されるmixed isotype抗原分子が疾患感受性を規定しているという仮説を立てその証明に向けて研究が進められている.この1つとしてHLAーRDB1,DQA1遺伝子をマウスL細胞にTransfectし,この発現したmixed isotype分子と種々のHLA抗原型のリンパ球を反応させ,リンパ球がこの分子を認識してtransormationを起こすことを確認した.今後この分子に対する単クロ-ン抗体を作成し,実際膵島細胞表面に発現されているか証明する必要がある.3.HLA抗原以外の遺伝子とIDDMの相関:IDDMのモデル動物であるNODマウスに於て,発症を規定する遺伝子としてIDDー1からIDDー4まで存在することが明らかにされ,その1つはヒトHLAに相当するHー2遺伝子である.ヒトに於てHLA抗原以外の遺伝子を検討した.T細胞受容体遺伝子,インスリン遺伝子,Thyー1遺伝子,CD3D遺伝子と本症の相関は見つからなかったがcーets proto oncogene(ETS1),Avall断片RFLPのみ有為な相関を認めた.この意義については今後の検討が必要である. 4.レプリコニズムの1例のインスリン受容体,受容体遺伝子の解析:典型的なレプリコニズムの1例を経験し,このインスリン抵抗性はインスリン受容体α鎖,exonー4,5の一部を含む1.3kbの欠失による,α鎖の構造異常に依ることを明らかにした.この遺伝子異常は母親由来であるが,母親に糖尿病を認めないことより,この異常意義の解明について検討した.患児の不死化リンパ球球を用いたインスリン結合能はゼロであった.しかし何代か継続培養すると結合能は出現し,母親の結合能には異常を認めなかった.5.DERIおよびDIAMOND研究:NIHおよびWHOの研究費による国際共同研究は順調に進み,多くの成果が得られ,1999年まで継続される.
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