研究概要 |
1.IDDMとHLA遺伝子:3年間の研究で、発症感受性遺伝子の1つとしてHLA-DRβ,DQα,β遺伝子が重要であり、日本人のそれは白人とやや異なる事を報告した。人種間でIDDM発症頻度が大きく異なる背景として、発症感受性遺伝子の一般人口の中に占める頻度の違いによるのではないかとの仮説のもとに、国際共同研究が開始された。すなわちIDDM患者、正常対象各々100名からDNAを抽出し、HLA遺伝子を解析し、発症率と、感受性遺伝子の頻度を検討している。現在まで米国Pittsburgh市、イタリアサルディア島、中国での検討ではHLA-DQβ鎖遺伝子、57番目アミノ酸Non-Aspの保有頻度とIDDM発症率の間には強い正の相関関係が認めらている。これに関連し、1992年6月、Pittsburgh大学においてNATO WOrkshopが開催され、出席発表してきた。 2.レプリコニズムインスリン受容体α鎖遺伝子解析:EBvirus不死化リンパ球を用いてインスリン結合能を検討すると共に受容体遺伝子について検討した。同じはプロタイプを有する母親の検討ではフレームシフトによりstop codonが形成されα鎖の合成が止まってしまう所見を得たが、患児本人についても検討中である。 3.レプリコニズムに対する合成IGF-1による治療効果:遺伝子工学により合成されたIGF-1をCSIIにて投与し、臨床的有用性並びに作用き機序について検討した。IGF-1投与にて血漿IGF-1濃度は容量依存性に上昇し、これと共に血糖、血清IRI濃度は低下した。血糖、IRI、IGF-1の相関を見ると、血糖とIRI間のみに強い相関があり、IGF-1はインスリン分泌に直接の作用はないものと考えられた。現在IGF-1の長期治療を継続中であり、インスリン抵抗性糖尿病の治療法として有用であるか検討している。 4.小児期発症IDDMの疫学:北海道内発症例について、引き続き研究を続けている。環境因子の1つとして母乳栄養の減少と発症に相関がみられた。
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