研究概要 |
新生児型マルチプルカルボキシラ-ゼ(MCD)欠損症は生後まもなくから著明な代謝性アシド-シスを呈する有機酸代謝異常症である。本症の一次性障害はアポカルボキシラ-ゼにビオチンを結合するホロカルボキシラ-ゼ合成酵素(HCS)にある。本研究の目的は本症の病因病態を分子レベルで明らかにすることがある。 1.ヒトHCScDNAのクロ-ニング HCSを先ず牛肝細胞質分画より精製した。その方法は硫安分画、アルミナゲル、DEAEセファロ-ス、CLー6B、セファクリルSー200HR、ハイドロキシアパタイト、フェニルスウパ-ロ-スHRによった。分子量は67,000であり,モノメトリックな酵素である。精製酵素をAchromobacter protese Iで消化後、アミノ酸配列の分析を行った。得られたアミノ酸配列の情報をもとに、オリゴヌクレオチドを合成し、牛肝cDNAライブラリ-から牛HCScDNAを得た。牛HCScDNA断片をプロ-ブとして、ヒト肝cDNAライブラリ-をスクリ-ニングし、全長cDNAを単離し構造解析をおこなった。現在、HCS欠損症患者の遺伝子変異を検索中である。 2.HCS反応機構 HCS反応はアポカルボキシラ-ゼとビオチンを結合してホロカルボキシラ-ゼにする反応である。ビオチンとATPからbiotinylーAMPを生成する第一段階とbiotinylーAMPとアポカルボキシラ-ゼを基質としホロカルボキシラ-ゼを生成する第2段階の2段階反応からなる。この2段階反応が同一酵素によってなされるか否かについては未だ明かではない。今回我々はMCD欠損症由来培養リンパ茅球でHCSの2段階反応が共に欠損していることを明かにし、2段階反応が単一酵素によってなされることを示唆した。
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