新生児NaiveT細胞の機能的特異性とMemoryT細胞への分化・成熟

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454268
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 宮脇 利男 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (10143885)
• 研究分担者: 谷口 昂 金沢大学, 医学部, 教授 (10019888)
• キーワード: CD45アイソホ-ム / 新生児T細胞 / Naive T細胞 / Memory T細胞 / アポト-シス死 / T細胞活性化 / サイトカイン産生能

研究概要

平成3年の研究にて以下の結果が得られた。
1.EBウイルス感染により引き起こされる伝染性単核症では、活性化CD8^+T細胞の増加がみらるが、その大部分はその活性化状態を反映してCD45RO抗原を発現、しかも比率の上では増加のみられないCD4^+T細胞もまたCD45RO抗原を強く発現、CD45RO発現は的症における両T細胞サブセットのEBウイルス感染による活性化状態を示唆する。興味あることに、このようなCD45RO抗原陽性T細胞サブセットは病理学的に、アポト-シスというメカニズムで容易に細胞死に陥ることを観察した。
2.抗CD3抗体によるmemory及びnaiveCD4^+ T細胞の活性化様式の相違をセルソ-タ-に単離した細胞を用い検討した。抗CD3抗体によるT細胞の活性化には、従来固相化した抗CD3抗体では単球非存在下で起きるとされてきたが、より事化した細胞を用いると、固相化の条件でも、memory CD4^+ T細胞もまた単球の存在が必要であることを明かにした。重要な点は、一般に反応の微弱とされるnaiveCD4^+ T細胞の抗CD3抗体反応性は、一定の条件(単球、ILー6、ILー2、ILー4などのサイトカインの供与)が整えばmemory CD4^+ T細胞に匹敵することである。naive CD4^+ T細胞の反応性の不良の背景に、これらサイトカインの産生の未熟性があると考えられた。
3.ILー2Rα鎖陽性、かつCD45RA陽性のnaive形質をもつが、memory細胞として機能を有する小細胞集団が、新生児臍帯血に存在する。この小細胞群のnaive CD4^+ T細胞の成熟過程での意義を明かにするために、新生児CD4^+ T細胞をin vitroで刺激培養、刺激後24時間にすでに、ILー2Rα鎖陽性かつCD45RA陽性の状態で、memory細胞様のサイトカイン産生能をもつ細胞を誘導可能であることを明かにした。

研究成果

• [文献書誌] Miyawaki,T.et.al.: "Expression of CD45RO(UCHL1)by CD4^+ and CD8^+ T cells as asign of in vivo activation in infectious mononucleosis" Clinical Experimental Immunology. 83. 447-451 (1991)
• [文献書誌] Miyawaki,T et al.: "Isotype commitment of human B cells that are transformed by EpsteinーBarr virus" European Journal of Immunology. 21. 215-220 (1991)
• [文献書誌] Taga,K.et al.: "Preferential expression of ILー2 receptor subunits on memory populations within CD4^+ and CD8^+ T cells" Immunology. 72. 15-19 (1991)
• [文献書誌] Kanegane,H.et al.: "A novel subpopulation of CD45RA^+CD4^+T cells expressing ILー2 receptor αーchain(CD25)and having a functionally transitional nature into memory cells" International Immunology. 3. 1349-1356 (1991)
• [文献書誌] Uehara,T.et al.: "Apoptotic cell death of primed CD45RO^+ T lymphocytes in EpsteinーBarr virusーinduced infectious mononucleosis" Blood.
• [文献書誌] Yachie,A.et al.: "Defective production of ILー6 in very small premature infants in response to bacterial pathogens" Infection and Immunity.