研究課題/領域番号 |
02454278
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀 嘉昭 九州大学, 医学部, 教授 (00050401)
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研究分担者 |
井上 光世 九州大学, 医学部, 助手 (10232563)
永江 祥之介 九州大学, 医学部, 助手 (60192233)
中山 樹一郎 九州大学, 医学部, 助教授 (40172473)
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キーワード | 悪性黒色腫 / アクチン |
研究概要 |
ヒトの色素細胞系病変部の皮膚生検組織中血管平滑筋型αアクチンを免疫組織化学的に検討すると、色素性母斑や老人性色素斑などの良性疾患では小動脈周囲の平滑筋細胞、毛細血管の周細胞、立毛筋などに豊富に陽性所見がみとめられるのに対し、悪性黒色腫では腫瘍内血管にごく弱い陽性像をみとめるのみで、腫瘍辺縁の既存血管と思われる比較的径の大きい血管にも反応が弱く、αアクチンの発現減少を示唆していた。そこで良性組織のαアクチン発現細胞に対し悪性黒色腫細胞が何らかの発現抑制因子を放出する可能性を考え、培養細胞の系を用いて検討した。まずヒト色素性母斑より遊走法で細胞培養を行い、蛍光抗体法でαアクチンの発現を確認した。さらに培養悪性黒色腫細胞株Mー14の培養上清を添加して2日間培養後、ウエスタン・ブロット解析を行ったところ、対照に用いた線維芽細胞培養上清に比べて、Mー14培養上清はαーアクチン発現に抑制作用を示した。αーアクチンを発現することが報告されている。ラット培養線維芽細胞株3YIに対しても、Mー14培養上清はαアクチン発現抑制作用を示した。細胞より抽出したmRNAでαアクチンのノ-ザンブロットを行ったところ、添加12時間後にαアクチンmRNAの減少がみられた。継時的に回収した細胞のウエスタンブロットでは、一回のM14培養上清添加後18時間後よりαアクチンは減少し、24時間から48時間の間減少した状態が続き、3日目には回復し始めていた。これらの性質は血管平滑筋に対する血小板由来成長因子(PDGE)の作用に類似していたことから、抗PDGF抗体でM14培養上清を前処理したところ、αアクチン抑制活性は減弱した。従って悪性黒色腫細胞によって産生されるPDGF様物質が良性細胞のαアクチンの発現を抑制することが示された。
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