ヒト悪性黒色腫組織をホモジェナイズし、抗α-アクチン抗体を用いてウエスタン・ブロット法によるα-アクチン発現量をみると、良性の色素性母斑にくらべバンドが著明に減少していることを既に報告した。今回種々の病型の悪性黒色腫のパラフィン切片を用いて抗α-アクチン抗体による免疫組織化学染色をおこない、腫瘍内および周辺の血管におけるα-アクチンの染色パターンとウエスタン・ブロット法の解析結果との比較、さらには予後との関連性について検討した。 悪性黒色腫の表皮内限局型(melanoma in situ)では腫瘍巣に近接する真皮上層の小血管壁のα-アクチンは母斑とほぼ同程度の染色性を示した。原発性の肢端黒子型では腫瘍巣内の小血管のα-アクチンの染色性は不均一で明瞭な血管と不明瞭な血管が混在していた。腫瘍の浸潤部の血管の染色性が減弱している傾向がみられた。結節型では腫瘍が深く浸潤している部分でさらに染色性が減弱していた。原発性悪性黒色腫の場合腫瘍巣周辺の血管壁のα-アクチンの染色性はかなり保持されていた。転移性の場合では皮膚転移巣では腫瘍巣内のみならずその周囲の血管もα-アクチン染色性が減弱していた。リンパ節転移巣ではリンパ節内の転移巣内血管は染色性が著明に減弱していたが、辺縁洞からリンパ節被膜部の血管は明瞭にα-アクチンが染色されていた。 悪性黒色腫組織の抗α-アクチン抗体を用いた酵素抗体法による血管の染色性の結果は以前おこなったウエスタン・ブロット解析によるα-アクチンの半定量的分析とほぼ相関していた。また染色性の減弱の程度と悪性黒色腫のステージの進行・患者の予後とはほぼ相関したものと思われた。
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