研究概要 |
1)神経線維腫症(NF1)の遺伝子解析 日本人NF1の7家系29例中sporadic case1家系を除き、解析可能な6家系26例について17染色体セントロメア付近のDNAマ-カ-を用い、その連鎖について解析を行った。DNAマ-カ-pllー2cll(BamHl)は全例がホモ接合体であり解析できなかった。セントロメアに座位するD17Z1(EcoRl)ではアメリカ白人とAllele頻度は異なっていたが、NF1の6家系中2家系に連関が認められた。残りの3家系は同じ切断パタ-ンを示し解析が出来なかった。NF1遺伝子に最も近いとされているpHHH202(Rsal)では、やはりその頻度はアメリカ白人と異なっており、NF1の6家系中1家系にしか連関が認められず、残りの5家系は連鎖解析はできなかった。従って、これら3種のDNAマ-カ-ではNF1の6家系中2家系しか連鎖解析はできなかったが、日本人NF1の遺伝子座も第17染色体セントロメア付近に座位することに矛盾はなかった。 2)NF1に合併した悪性神経鞘腫の遺伝子解析 患者のリンパ球、悪性神経鞘腫およびその樹立株細胞ではpHHH202(Rsal)を使用した場合、バンドのパタ-ンに異常は見られなかったが、第17染色体セントロメアのDNAマ-カ-であるD17Z1(EcoRl)では、樹立株細胞で明らかにバンドの消失が認められた。しかし、pulse field gel electrophoreisisでの解析では変異はみられなかった。各種oncogene(Hーras,Nーras,Kーras,cーmyc,Nーmyc,erbーB)の検索では悪性神経鞘腫でその増幅や発現に異常を認めなかったが、17染色体短腕に座位する癌抑制遺伝子であるp53 geneの欠失が認められ,神経線維腫においてp53遺伝子の欠失は悪性化への重要な役割を果たしているものと考えられた。
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