研究概要 |
BRM(Biological Response Modifier)である乳酸菌製剤(LC9018)やOK-432を用いて、これまでその放射線防護効果を明かにして来た。本年はLC9018についてはそれを生体内に投与した場合に血中の造血幹細胞の回復促進Factorがどうなるか、また、生体内のTNFはどう変化するかについて検討した。その結果、LC9018を照射前に投与すると、明かに血中の造血障害の回復活性が上昇すること、また、肝臓中やヒ臓中等のTNF含有量が著しく上昇する事を証明した。(In Vivo 1992,Radiat.Res.1993)OK-432についてはin vitroの系を用いて放射線防護の直接効果を検討した。照射3時間前から24時間前までにOK-432を骨髄細胞と反応させると、明かな骨髄中のGM-CFC数を増加させる因子が反応液中に出現する事を証明した。次に、新しい放射線防護剤としては制ガン剤の一つである5-FUと新しく合成したメチルチオライボース(MTR)について造血の放射線障害に対する防護作用を中心として研究を行った。5-FUは制ガン剤の一種であり、むしろ放射線増感剤として知られていた。照射3-5日前に5-FUをマウスに投与すると、明かな放射線防護効果が出現する事を発見した。また、5-FUの投与は内因性幹細胞数の上昇を誘導し、血小板の放射線障害の回復を促進させる事を証明した。(J.Radiat.Res.,1992,Jpn.J.Cancer Res.,1992)MTRは14種の物質を合成した。その一つであるZR-14(ライボース環の1の位置にメチル基ついた化合物)が最も強い放射線防護効果を示した。この化合物は800mg/kgの大量投与でも毒性がなく、10Gyを照射したマウスが100%生き残る事が出来るので、将来有望な放射線防護剤となるであろう。さらに、詳細な研究が必要である。
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