研究概要 |
我々は平成2年度までに,正常ヒトド-パミンD_2受容体遺伝子をクロ-ニングすることに成功し、遺伝子の構造解析を行なった.その結果,受容体蛋白をコ-ドする領域は7つのエクソンに分断されており,そのうちの第5番目のエクソンの挿入の有無によるalternative splicingの機構が存在することが明らかになった.3'非翻訳領域は,蛋白コ-ド領域のC端部と共に7番目のエクソンを構成していた.これらの遺伝子領域は,全長約13kbにわたっており,エクソン・イントロン境界の塩基配列はGT/AGル-ルに従っていた.また,ごく最近報告されたラットの遺伝子と同様に,5'非翻訳領域に非常に長いイントロンが存在することが判明したが,5'非翻訳領域のみを含むエクソン1は,これまで我々がクロ-ン化したゲノムDNA断片には含まれていなかった. ド-パミンD_2受容体遺伝子のポリモルフィズムをみつける目的で,正常人の白血球から遺伝子DNAを抽出し,いろいろな制限酵素でDNAを切断して,サザンブロット解析を行なった.これまでに,ド-パミンD_2受容体遺伝子のいろいろな領域をプロ-ブし,約20種類の制限酵素を用いて解析を行なったが,未だRFLPは見出されていない.また,米国で認められたTaqlでのポリモルフィズムも日本での我々の検索では,認められなかった.一方で,精神分裂病患者とその家族に実験の目的とその重要性を説明し,同意の得られた患者と家族の白血球から遺伝子DNAを抽出することを,上記の実験と平行して進めた.特に,家系内発症を認め,かつ抗精神病薬によく奏効する精神分裂病患者の家系で,ド-パミンD_2受容体遺伝子を検索することは重要であると思われるので,DNAの採集に努めている.
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