大脳皮質や辺縁系ニュ-ロンにおけるペプチドmRNAの発現とそのド-パミン調節

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454292
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 佐藤 啓二 滋賀医科大学, 医学部・精神医学講座, 講師 (80093417)
• キーワード: ド-パミン / 線状体 / ペプチド代謝 / in situハイブリデ-ション法 / 大脳皮質 / 霊長類 / メッセンジャ-RNA / ハロペリド-ル

研究概要

ほ乳類の前頭葉皮質、線条体や辺縁系は豊富なド-パミン神経支配を受けており、その領域内のニュ-ロンはペプチドの合成や代謝の面で、ド-パミン神経伝達の強い影響を受けている。今回、私達はラットやサルなどの動物脳においてin situハイブリデ-ション法などの分子生物学的技法や免疫組織化学的方法を用い、前頭前野や大脳辺縁系における各種ペプチドの分布を調べ、また同領域内のニュ-ロンにおけるペプチドmRNA発現に対するド-パミン神経伝達の影響を検索した。ニホンザル大脳皮質において、ソマトスタチンやニュ-ロテンシンを含有する細胞体と線維の分布に特徴が認められ、前者のペプチドはラットなどと同様に広範囲な分布を示したが、後者の分布は前頭葉内側面および辺縁皮質にほぼ限局し、また一部ド-パミン支配領域に一致していた。ド-パミン・レセプタ-遮断剤であるハロペリド-ルを慢性的に投与したラットにおいて、線条体のペプチドmRNAの発現様式をin situハイブリデ-ション組織化学的方法によって調べた。今回、preproenkephalin(enkephalin)、prodynorphin(dynorphin)に対するmRNAのオリゴヌクレオチド・プロ-ブを作製した。クリオスタットにより得られた前脳切片においてin situハイブリデ-ションを行い、 ^<35>Sーオ-トラジオグラフィ法を実施した。オ-トラジオグラム標本より、大脳皮質や辺縁系ニュ-ロン内におけるmRNA発現の変化を定量的にコンピュ-タ解析した結果、抗精神病薬投与群ではダイノルフィンmRNAよりもエンケファリンmRNAの発現レベルに増加が認められた。今後、定型的な抗精神病剤のハロペリド-ル投与ラットの大脳皮質や辺縁系において、ニュ-ロテンシン/ニュ-ロメヂンN、サブスタンスア、eck等のmRNA発現にみられる変化を調べ、ド-パミンの脳内物質代謝に及ぼす影響について検討する。

研究成果

• [文献書誌] Satoh,K.&Matsumura,H: "Distribution of neurotensinーcontaining fibers in the frontal cortex of the maeaque monkey" J.Comparative Neurology. 298. 215-223 (1990)
• [文献書誌] 佐藤 啓二,C.R.Gerten,H.C.Fibiger: "線条体、側坐核ニュ-ロンにおけるエンケファリン-,ダイノルフィン-mRNA発現に対するハロペリド-ルの影響" 厚生省・精神神経疾患研究委託費「精神分裂病の生物学的病因及び発症に関する研究」平成元年度報告書. 115-120 (1990)
• [文献書誌] Matsumura,H,,Narita,M.Satoh,K.&Nagatsu,I.: "Computerーaided quantitative analysis of the distribution of catecholamineーcontaining fibers in the primate prefrontal cortex." Basic,Clinical and Therapeutie Aspects of Alzheimer's and Parkinson's Diseases. 1. 411-414 (1990)
• [文献書誌] Iritani,S.&Satoh,K.: "Distribution of somatogtatinーimmunoreactive cell bodies and fibers in the neocortex of Macaca fuscata" Synapse. (1991)
• [文献書誌] Satoh,K.編: "“Mechanism of Dopamine Transmission:An Update"(Proceeding of the Satellite Symposium of the 17th.C.I.N.P.)" Folia, 25 (1991)