1.はじめに 1987年2月、EgelandらはNature誌において、感情障害の責任遺伝子座位が11番染色体短腕末端部に存在するとの画期的な報告をおこなった。つづいて1988年11月にはSherringtonらによって精神分裂病の責任遺伝子座位が5q11〜5q13あると報告がなされた。しかし同じNature誌上には、同時にEgelandらの研究の否定的なGurlingら、Gershonらの結果も報告された。また分裂病についてのSherringtonらの報告に対しても、これに否定的なKennedyらの結果が報告された。いっぽう87年5月にはMendlewiczらが遺伝子座位X染色体長腕末端部に存在するとの報告をおこない、感情障害の遺伝的異種性を示唆した。以上のように分子遺伝学研究は機能性精神障害の生物学的研究の最先端をいく重要な分野となっている。 2.対象と方法 感情障害を発端者とする2家系17名(うち罹患者6名)および分裂病を発端者とする1家系16名(うち罹患者9名)について、前者は11番染色体に座位するINS、HRAS1の切断片を、また後者については5番染色体のD5S76の座位および11番染色体のD2レセプタ-の座位のプロ-ブを用いてそれぞれ連鎖を検討した。 3.結果 感情障害の2家系においてはINSおよびHRAS1との連鎖は認められなかった。また分裂病の家系については統計的にロッド値を検討したところD5S76の座位についてはー0.4794およびD2レセプタ-についてはー1.570の値を得た。いずれも有意とされるー2以下3以上の範囲に入らず、連鎖は認められなかった。
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