研究概要 |
1.蛋白分解酵素阻害物質の特続注入による神経組織への影響 近年、アルツハイマ-病における老人斑に蛋白分解酵素阻害物質の一種であるアルファー1ーアンチキモトリプシン(アルファー1ーACT)が存在することが明らかにされている。また、他の蛋白分解酵素阻害物質であるロイペプチンが老人斑でみられるような神経突起の膨化と変性を引き起こすことも本研究に先立つわれわれの研究で明らかになっている。この蛋白分解酵素阻害物質の老人斑を形成する上での役割を直接的に検討するため、本研究をおこない、以下の結果を得た。 a.アルファー1ーACTを浸透圧ミニポンプによって2週間脳内持続注入したラットにおいて、脊髄後索に著明な軸索の膨化、その部位における細胞内小器管や神経フィラメントの蓄積をみとめ、また、海馬におけるシナプスの変性像を観察し得た。このことは、この物質が老人斑における神経突起の変性やシナプスの変化の形成に係っている可能性を強く示すものである。 b.ロイペプチンを浸透圧ミニポンプにより2週間脳内持続注入したラットをさらに1〜2か月生存せしめると、脳内の神経突起の膨化・変性や、神経細胞の胞体内に生ずるリポフスチン形成が、更に進行すること、また、次第にシナプスの変性が加わることが明らかにされた。このシナプスの変性像は、老人斑において必発の病変であることから、その所見の意味はとくに注目に値するものと考える。 2.培養神経組織の神経突起に対する蛋白分解酵素阻害物質の影響 培養神経節細胞の突起に対するアルファー1ーACT,ロイペプチンなど蛋白分解酵素阻害物質の及ぼす影響について検討中である。この点に関しては、なお、際立った意味をもつ所見は得られていない。
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