ガン播種性腹膜転移抑制に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454298
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 平山 廉三 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (10014317)
• 研究分担者: 仁瓶 善郎 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (00189341) ; 三島 好雄 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00010158)
• キーワード: ガン転移 / 転移抑制遺伝子 / 腹膜播種 / nm23 / NDPキナーゼ / パラビオーシス / SCIDマウス / 温熱療法

研究概要

近年、癌転移抑制遺伝子nm23の発見は「癌転移研究の革命」ともいわれた。遺伝子グローニングデータの蓄積から、1991年に、Nm23とヌクレオシドニリン酸キナーゼ(NDPキナーゼ)との構造的相同性が確認され、ここに、転移機構の分子的解明に暁光がみえた。偶然、以前からNDPキナーゼ(の他機能)に関心を寄せていた我々は、平成4年度科学研究費補助金の交付申請書に記したように、転移抑制因子Nm23/NDPキナーゼとガン播種性腹膜転移の関係の検討を「研究課題」に追加した。ヒト乳癌巣ではNDPキナーゼ発現量と癌再発頻度の間に、大腸癌では肝転移・肝再発との間に有意の逆相関がみられ、胃癌では、発現の多寡とリンパ節転移や癌再発頻度とが反比例の傾向にあるという臨床的事実を明きらかにし注目を集めた。しかし、いずれの癌においても播種性腹転移そのものとの間の明解な関連は未だ証明されていない。さらに、NDPキナーゼ/nm23は、シグナル伝達系に関与し、癌の種類や転移様式によって転移能を促進的あるいは抑制的に調節する機序が予測されたが詳細は今後の研究にまつ。
新たに開発したパラバイオーシス・モデルによって、腹膜播種に影響を与える諸因子を、癌細胞側、局所の微小環境側、局所体液性要因に3区分して、転移巣の成立と増殖過程における抗腫瘍効果の反応カスケードを明かにした。腫瘍免疫に関しては、とくに、免疫系遺伝子の欠落したSCIDマウスと、各T cell subsetを移入して免疫機構を再構築したマウスにおける、転移多寡を比較し、T cell機能の制御による免抗腫瘍効果の可能性、および免疫学的操作の基盤となる所見をin vivoで証明した。温熱・脱繊維素原剤、プロスタグランヂン合成阻害剤による腹膜播種の抑制効果を実験的に証明し、播種性腹膜転移に対するRF波超長期の加温による予防法と、QOL維持可能な治療法を実用化した。

研究成果

• [文献書誌] R.HIRAYAMA et al: "A mouse model to assess age effect on peritoneal dissemination and growth of melanoma cells." Lu Journal du Cancer. 4. 241-245 (1992)
• [文献書誌] R.HIRAYAMA et al: "Positive relationship between expression fo anti-metastatic factor(nm23 gene product or Nucleoside diphosphate kinase)and good prognosis in human breast cancer." JNCI. 83. 1249-1250 (1991)
• [文献書誌] 広川,平山他: "老化に伴った癌の生物学的態度" ONCOLOGIA. 25. 404-408 (1992)
• [文献書誌] 竹村,平山他: "胃癌患者末梢血の免疫学的パラメータの検討" BIOTHERAPY. 6. 645-647 (1992)
• [文献書誌] 市川、平山他: "Mitoxantrone-Lipiodol エマルジョンの作製法の基礎的検討" 癌と化学療法. 19. 1550-1552 (1992)
• [文献書誌] R.HIRAYAMA et al: "Influence of host environment and systemic humoral factors on the implantation and the growth rate of metastatic tumor in parabiotic mice constructed between young and old mice." Clinical and experimental metastasis. 11. (1993)
• [文献書誌] 平山、沢井: "乳癌縮小手術ノート" へるす出版(東京), 180 (1992)
• [文献書誌] 平山: "胃癌手術ノート" ヘルス出版 東京, 240 (1993)