研究概要 |
大動脈腸骨動脈領域の手術では下肢血行はもちろんであるが腹腔内および骨盤内血行の保持に留意する必要がある。われわれが独自に開発し改良してきた経肛門的直腸ドップラ-法は上直腸動脈の血行状態を非侵襲的に観察できる利点があり、この領域の手術の安全性を一層高めることができた。 とくに腹部大動脈瘤手術では従来言われてきた理論をくつがえして一本の下腸間膜動脈と2本の内腸骨動脈の3本を結紮しても安全な症例があることが判明した。このことは今後さらに増加すると思われるこの種の疾患の治療上重要なことである。腹腔内側副路の発達程度を知る上でこの方法は現在世界唯一のものであり,大動脈病変に対する後腹膜経路到達法という腹腔内臓器を直視しないで行う術式では決定的に有利な情報を提供してくれることが判明した。 さらに今年度は内腸骨動脈の閉塞性病変によってひきおこされる賢筋跛行や血管性インポテンスの治療効果の判定にこの方法が有用であろうと考え応用した。その結果この方法は血行再建物の成否に強くかかあっていることが判り今に客観的治療効果判定方法として活用すべきものと考えられた。特に経皮的内腸骨動脈拡張術ではこの方法は唯一の術中判定手段であった。 さらに臨床応用とプロ-ベの改良に重点を置いて研究を重ねてゆきたい。
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