閉塞性動脈硬化症と粥状硬化性腹部大動脈瘤患者の近年の飛躍的増加に対してその安全な治療法の確立が急務である。 われわれが独自に開発し主として臨床応用してきた経肛門的直腸壁ドップラー法の経験は120例以上に達した。本法は非侵襲的診断法であり、何ら患者の苦痛なしに腹腔内や骨盤内血行をダイナミックに把握でき腹部大動脈、腸骨動脈を中心とした領域の手術を安全に行う指標を提供できた。 腹部大動脈瘤では従来の理論をくつがえして1本の下腸間膜動脈と2本の内腸骨動脈の計3本を継繋しても本法による直腸内ドップラーシグナルが存在すれば約30例の症例で安全であることが証明できた。さらに大動脈遮断によっても直腸内シグナルが十分強ければ従来使用してきたヘパリンの全身投与を行うことなく動脈吻合を行うことができることも記明した。 このように本法は腹腔内側副路の発達とそのチャンネルをダイナミックに把握可能であった。そして世界唯一の簡便かつ正確な指標として各学会で認められるに至っている。 一方、現在までその病態が不明であった殿筋跛行や血管性インポテンスについても診断ならびに治療効果の判定に有効であることが判明しその内容を発表してきた。本法は客観的判定法として活用できるばかりでなく、近年増加している腹腔内操作を避けた後腹膜アプローチによる術式選択では唯一の客観的な方法である。 先端プローベの改良については直腸粘膜がよく接触するよう脱気ゼリーを旨く注入できる様工夫改良を加えた。その結果本法によるfalse negative率はほとんど0となり、より正しい情報を提供できるようになった。本法について英文論文を発表したので広く世界で追試されることを願っている
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