研究概要 |
〔緒言〕Endothelin(ET)は血管内皮細胞より産生される強力な血管収縮物質である。腎はETの主要な作動器官であり、腎機能障害を起す各種病態へのETの関与が注目されている。一方ヒト肝移植後の腎機能障害は、重篤な合併症であるが、その病態の詳細については不明である。 最近、ETは血管内皮細胞の他に、刺激された類〓内皮細胞(SEC)からも産生されることが、報告されている。我々は昨年度までの研究において肝類〓内皮細胞(SEC)のreceptor-mediatch endocytosis機能が、拒絶反応の早期より変化することを明らかにしてきた。そこで本年は肝移植後の急性拒絶反応時における腎機能障害につき評価し、その病態におけるETの関与について検討した。 〔方法〕以前と同様のラットの組み合せで、同所性肝移植を行い、術後1,3,5,7及び9日目に屠殺した。血中ET濃度の測定の他、腎機能として内因性クレアチニンクレアランス(C_<cr>)、腎血行状態の評価として開腹下にReflectance spectrophotometry で、腎局所ヘモグロビン濃度(IHb)及び腎局所ヘモグロビン飽和度(ISO_2)を計測した。 〔結果〕1)C_<cr>:拒絶群12、術後5日目より対照群に比し、有意に低下し(pc0.05)、その後漸減し、9日目には最低値3.82±1.65nl/doy/100gbw(pc0.01)を示した。2)血中ET濃度:拒絶群では術後5日目より有意にET値は上昇し(pc0.05)、その後漸増し、9日目にはピーク(5.38±0.95pg/ml)に達した(pc0.01)。3)腎血行状態:IHb及びISO_2はともに、拒絶群では術後5日目より有意に低下し(pc0.05)、その後も漸減し、9日目には最低値(62.0±304,33.3±1.36%)を示した(pc0.01)。 〔結論〕1)腎機能は急性肝拒絶反応の進展にともなって増悪した。2)肝移植後の拒絶反応時における腎機能障害の病態には内因性ETが関与し、主として腎血流を低下させることにより、起こると考えられた。
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