研究概要 |
急性動脈閉塞症におけるMNMSの病態解明とその治療成績の向上を目的として,雑種成犬を用いた基礎的研究を行った。下腸間膜動脈下の腹部大動脈,両側総腸骨動脈,正中仙骨動脈,両側大腿動脈を遮断し,24時間後に再潅流を行い種々のパラメ-タ-について検討した。採血は下大静脈より行ない,コントロ-ル,遮断解除前,遮断解除直後,遮断解除30分後,遮断解除60分後に行なった。 このうちCPK,GOT,GPTおよびカリウムなどは,骨格筋細胞の破壊によって,血中濃度が従来の報告と同様に上昇した。さらにBUN,クレアチニンなどの腎機能を表すパラメ-タ-は遮断解除後に上昇傾向を示し,60分後に最高値を示した。 さらに,下大静脈よりの全血中の白血球数を検討すると,コトンロ-ルに比して遮断解除前にまず上昇する。つぎに遮断解除後から時間の経過と共に白血球数は減少傾向を示し60分後には遮断解除前に比較して有意に低値を示した。この白血球変化のうち,分画より変化を示すものは好中球であり,再潅流障害に最も関与しているのは好中球と考えられる。近年虚血再潅流後の白血球,特に好中球の関与が注目されているが,下肢骨格筋虚血再潅流モデルにおいても白血球,特に好中球の関与が示唆された。MNMSによる腎機能障害,肺機能障害などの全身への影響はこの活性化された好中球によるものと考えられるので,今後は各臓器における活性化好中球の局在について検討する。
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