ハイブリッド型人工皮膚の開発研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454303
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 一色 信彦 京都大学, 医学部, 教授 (50025566)
• 研究分担者: 鈴木 茂彦 京都大学, 医学部, 助教授 (30187728)
• キーワード: 人工皮膚 / 創被覆材 / 培養皮膚 / コラーゲン / 埋植材料

研究概要

1.「2層性人工皮膚」作成方法の改良と臨床使用結果
内層のコラーゲンスポンジ層(人工真皮)はGAG無添加の材料に切り替え再凍結乾燥化により保存方法も簡便化した。臨床使用結果を検討した結果、二次的植皮は全例、ほぼ完全生着し、術後の拘縮や色素沈着も少なく、整容的に満足できる結果が得られている。採皮部もわずか10日前後で表皮形成完了し、肥厚性瘢痕による醜状を残していない。 GAG添加材料を用いた症例と無添加材料を用いた症例を比較して臨床的に差を認めなかった。再凍結乾燥材料と、以前の材料間にも差を認めなかった。これらの結果、この「2層性人工皮膚」の今後の一般的使用への展望が開けたと思われる。
2.複合培養皮膚の作成
人工真皮上に線維芽細胞を1×10^6の濃度で播腫し、以降2日毎に培養液を交換し4週間培養を続け人工真皮内で線維芽細胞を増殖させ、これにより産生される細胞外基質によりスポンジの空隙を塞ぐ。その上に2×10^5個の表皮細胞を播き、24時間インキュベートする。その後6ウエルプレートに移し表皮細胞が直接培養液に接しないようにair-liquid interface法により培養をおこなった。培養7日目で正常皮膚とほぼ同じ厚さの分化した表皮層が形成された。これは前年度に報告したコラーゲンゲルやマトリゲルを塗布した人工真皮上で培養した表皮層に比べ正常皮膚により類似しており一歩進んだ材料と思われた。
3.皮下埋植材料としての人工真皮の使用研究
人工真皮内での軟骨膜細胞の培養を試みコラーゲンスポンジ内での軟骨膜細胞による軟骨形成が認められている。今後の課題は短期間での臨床応用可能な量の軟骨形成の実現であろう。

研究成果

• [文献書誌] 丸口 友子,丸口 幸也,鈴木 茂彦,松田 和也,一色 信彦: "人工真皮上での表皮細胞の培養" 日本形成外科会会誌. 12. 73-82 (1992)
• [文献書誌] Matsuda,K.,Suzuki,S.,Isshiki,N.,Yoshioka,K.,Wada,R.,Hyon,S.H. and Ikada,Y.: "Evaluation of a bilayer artificial skin capable of sustained release of an antibiotic." Biomaterials. 13. 119-122 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦,松田 和也,一色 信彦,筏 義人: "「2層性人工皮膚」臨床使用例の検討." 熱傷. 18. 46-52 (1992)
• [文献書誌] 松田 和也,鈴木 茂彦,一色 信彦,筏 義人: "2層性人工皮膚におけるGAG添加の効果について." 日本形成外科学会会誌. 12. 137-148 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦,一色 信彦,松田 和也: "人工皮膚." 臨床検査. 36. 761-764 (1992)
• [文献書誌] 丸口 友子,丸口 幸也,鈴木 茂彦,松田 和也,一色 信彦: "人工皮膚をマトリックスとした複合培養皮膚作成." 日本形成外科学会会誌. 12. 351-358 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦: "熱傷治療最近の進歩ーーBiological dressing." 外科治療. 67. 641-646 (1992)
• [文献書誌] 松田 和也,内藤 浩,平良 達三,鈴木 茂彦,一色 信彦,木村 正,森田 真一朗: "コラーゲンスポンジとシリコーン膜よりなる2層性人工皮膚の評価." 公立豊岡病院紀要. 4. 39-44 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦: "熱傷および種々の皮膚損傷の治療と最近の医療材料の進歩." 兵庫県全外科医会雑誌. 114. 9-15 (1993)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦,一色 信彦,平良 達三,松田 和也,黒川 正人,井上 邦雄,月江 富男,橘 佐和子: "再凍結乾燥型2層性人工皮膚(GM901)の多施設における臨床使用結果." 形成外科.
• [文献書誌] 鈴木 茂彦,一色 信彦: "MEの応用ー形成外科ー,新外科学体系11 ME・人工臓器" 中山書店 東京, P76-84 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 茂彦,松田 和也: "人工皮膚:創傷の治療,最近の進歩.森口隆彦編" 克誠堂出版,