1.「2層性人工皮膚」作成方法の改良と臨床使用結果 内層のコラーゲンスポンジ層(人工真皮)はGAG無添加の材料に切り替え再凍結乾燥化により保存方法も簡便化した。臨床使用結果を検討した結果、二次的植皮は全例、ほぼ完全生着し、術後の拘縮や色素沈着も少なく、整容的に満足できる結果が得られている。採皮部もわずか10日前後で表皮形成完了し、肥厚性瘢痕による醜状を残していない。これらの結果、この「2層性人工皮膚」の今後の一般的使用への展望が開けたと思われる。 2.複合培養皮膚の作成 ゲル状のI型コラーゲン(1mg/ml)でコートしたもの、基底膜類似マトリックスであるマトリゲルでコートしたもの、人工真皮内で線維芽細胞を培養増殖させ、これにより産生される細胞外基質によりスポンジの空隙を塞いだもの、これら3種類の人工真皮上で表皮細胞を培養することにより複合培養皮膚の作製を試みた。表皮細胞の培養はair-liquid interface法によりおこなった。いずれの材料も表皮層の重層化に成功したが、コラーゲンゲルやマトリゲルを塗布した材料に比べ線維芽細胞を利用した材料が正常皮膚にもっとも類似していた。 3.皮下埋植材料としての人工真皮の使用研究 「2層性人工皮膚」内層のコラーゲンスポンジ(人工真皮)を皮下埋植材料として用いるための基礎実験もおこなった。コラーゲンスポンジにポリ乳酸繊維を併用した材料では埋入12か月後でも初期量の40%が維持された。 さらに人工真皮内での軟骨膜細胞の培養を試み、コラーゲンスポンジ内での軟骨膜細胞による軟骨形成が認められた。今後の課題は短期間での臨床応用可能な量の軟骨形成の実現であろう。
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