研究概要 |
肝移植に際し,肝類洞壁構成細胞上に表現されているクラスII抗原をコントロ-ルできれば,移植后早期の急性拒絶反応を制御しうるのではないかと考えた。本研究では,イヌ肝移植モデルを用いて,移植肝由来のクラスII抗原をイヌ・クラスII抗原と交叉反応性を有するOKIa1という抗クラスII抗体で覆うことによって,急性拒絶反応を実際に制御しうるか否かを検討した。 具体的には,移植前にイヌ・ドナ-肝を抗クラスII抗体でex vivo perfusionし,その後に同所性肝移植を行い,つぎのような研究成果を得た。(1)抗クラスII抗体で潅流後の肝非実質細胞を刺激細胞としたリンパ球混合培養は有意の抑制されていた。(2)肝移植後の肝移植の推移を潅流群と非潅流群とで比較すると,急性拒絶反応の指標となる血清ビリルビン値,アルカリフォスファタ-ゼ値は,非潅流群では移植後4日目より上昇するのに対し,潅流群では正常域にあり,有意に急性拒絶反応は抑制されていた。(3)小円形細胞浸潤,血管災および胆管傷害などといった肝移植後の急性拒絶反応の組織所見は,非潅流群に比較して, 潅流群では有意に軽度なものであった。 以上のごとく,本研究を通して明らかになったことは,同所性同種肝移植後の急性拒絶反応には,肝類洞壁構成細胞上に発現してくるクラスII抗原がその引き金として重要な役割を演じていること,さらに,これを抗クラスII抗体で遮断してやることによって,急性拒絶反応の制御が可能であることが示された。このような抗クラスII抗体を用いたドナ-肝のex vivo perfusionは,ヒト肝移植の臨床に応用可能な人為的免疫操作法(artificial immunomodulation)といえる。
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