研究概要 |
BUF(RTー1^b)からLEW(RTー1^1)への同種腎移植を受けたラットを無処置群(NT群)、シクロスポリン投与群(CyA群)に分けそれぞれの脾臓内T細胞に誘導されるTSE,パ-フォリン(PFP),細胞傷害活性を細胞質のPercoll超遠心分画法を用いて各分画について比較検討した。細胞質の抽出には、それぞれの活性を温存する目的でParr社のCell Disruption Bombを用いた。次に各種のクロマトグラフィを用いてNT群のPercoll分画の高密度領域からTSEを精製し、その生化学的特徴、生物学的機能を検討した。超遠心分画で得られたNT群の高密度領域にはCyA群の同領域と比較して高いTSE活性(90〜120U/ml)と細胞傷害活性(27.8±4.5%)が検出されたが、PFP活性は2つの群のどのPercoll分画に於いても検出できなかった。精製されたTSEは中性付近(6.55〜7.35)に等電点を有し、pHが8.0で最大活性を示す分子量6万のモノマ-であり、その活性はセリンエステラ-ゼやトリプシンのインヒビタ-によって抑制されたが免疫抑制剤の影響は受けなかった。またカゼイン、フィプロネクチンといった高分子タンパクに対する分解活性は有するものの細胞傷害活性は精製前の活性に比べて低値(5.0±3.8%)を示した。これらの所見より拒絶反応時、レシピエントの脾臓内T細胞には高活性のTSEが産生、誘導されるが免疫抑制下においてはその産生が強く抑制されると考えられる。また精製された分子量6万のTSEは単独では標的細胞に対して細胞傷害活性を示さなかったが、高密度領域に発現される傷害活性を考えるとTSEはPFP以外の未知の攻撃分子(Effector molecule)と強く関連して働きこの分子の補助的な役割を果たしていると推察される。
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