小腸大量切除後自己残存小腸のみで消化吸収及び腸管運動に十分な機能を維持できる方法を研究し、さらに小腸大量切除後の同種での小腸移植術の可能性と生着率向上の手段を見いだすため本研究を行った。 本年度では犬を用いて実験的に小腸大量切除を行い、小腸吻合や自己残存小腸を用い部分的逆蠕動吻合術を行い、術後の腸管運動を双極電極あるいはフォ-ストランスジュ-サ-を用いて検討した。術後、短期(1カ月)の腸管運動を比較検討することにより、付加手術の有効性を検討した。 小腸大量切除術(約75ー80%切除)後、小腸吻合や小腸部分逆蠕動吻合後の小腸運動を検討することにより、以下の知見を得た。 1.小腸大量切除術後は、食後期が著明に延長し、食後最初の強収縮波(MMC)が出現するまで長時間かかった。また十二指腸での周期的MMC発生は、無処置対照群に比べやや延長していた。これは小腸大量切除後の適応運動と考えられた。 2.逆蠕動小腸吻合術後では、十二指腸でのMMC発生間隔が著明に延長していた。 3.また、逆蠕動小腸吻合術後では空腸上部から回腸にかけて、特に逆蠕動吻合部前後にかけて、同時性収縮が頻回に起こり、MMCの発現が阻害されていた。すなわち腸閉塞症状の腸管運動であった。 4.さらに、逆蠕動吻合術後では、吻合部口側での空腸では肛門側に伝播しない不規則な短収縮が繰り返された。また術後3ヶ月には吻合部前後の小腸が拡張し、同部に食物残渣の貯留を認め、慢性腸閉塞の状態を示した。
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