研究概要 |
(1)ガストリノーマに関して私達の開発した選択的動脈内セクレチン注入法は国際的に普及した。この原理をインスリノーマに応用し、カルシウム溶液を膵周囲動脈内に注入して、インスリノーマの栄養動脈を同定する方法を3人のインスリノーマ患者に施行し有効であった。内1例は画像診断も門脈採血法も無効であった。 (2)セクレチンが正常G細胞とガストリノーマの両者を刺激してガストリンを分泌させることを示したが、正常B細胞とインスリノーマ、正常A細胞とグルカゴノーマではセクレチンに対する反応は全く異なり、膵内分泌腫瘍は全くインスリン、グルカゴンを分泌しなかったが、正常A、B細胞は各々のホルモンを分泌した。VIPomaもVIPを分泌しなかった。この現象の機構の解明は未解決であるが、この現象は、これらの内分泌腫瘍を有する患者の鑑別診断を可能にした。即ち正常内分泌腺の機能圧進があればセクレチン静注で過剰反応を呈すが、腫瘍患者では正常分泌腺の機能は低下しているので、殆んど反応しないからである。国内の5例に鑑別診断上有用であった。 (3)国内114例のガストリノーマ患者を分析したところ十二指腸がストリノーマ(DGoma)の予後が膵がストリノーマ(PGoma)より有意に良好で、肝転移も少なかった。この原因は各々のGomaの起源細胞の違いではないかと推論し、各々の構成内分泌細胞を調べたところD-Gomaはインスリン産生細胞とグルカゴン産生細胞を含まず、P-Gomaは必らず含んでいた。また多発性内分泌腺腫症工型の患者のガストリーマが十二指腸に殆んど存在し、膵体尾部に存在しないことを自験例の2手術と文献的に剖検を含んだ齢で実証した。この事は外科的切除で根治しうることを示し意義深い。肝癌、膵癌、ラ島B細胞をlnterferond,cytochalasin B,D,で刺激し多少の反応(AFP,CA19-9の上昇)を認めたが、いまだ診断に用いるにはより強力な刺激剤の追求が必要であり一層の研究が要望されている。
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