研究概要 |
1.(1)目的:肝における再灌流時における障害についてはなお不明な点が多い。グルタチオンは過酸化水素のスカベンジャ-として知られているが,今回,酸化的ストレス時における肝グルタチオン代謝変動に焦点をあて検討した。(2)方法:Wistar系ラットを用い,実験群;上腸間膜静脈(SMV)30分遮断後再灌流,シャム(コントロ-ル)群;単開腹,に分けた。経済的に肝組織,下大静脈(IVC),肝汁中のGSH,GSSG(各々還元型,酸化型グルタチオン)の測定を行った。GSH,GSSGの測定はグルタチオン還元酵素ーDTNB法を用いた。肝組織のATP,エネルギ-チャ-ジ(EC)の測定はAtkinson等の方法によった。(3)結果:実験群の肝組織GSH,GSSGはシャム群と有意な差は認ず、肝グルタチオンはそのホメオスタ-シスを維持した。IVC血漿GSH,GSSGはSMV遮断10分後にはシャム群に比して有意な上昇(GSHはシャム群の約2倍)を示し,30分遮断後は再灌流120分後もその高値を維持した。特にGSSGは著明(シャム群;の3倍以上)な上昇をみた。胆汁中のGSH,GSSGはSMV遮断後減少し,再灌流後再上昇した。肝組織ATP,ECはSMV遮断後減少し,再灌流10分後には元に回復した。血中GOT,GPT,LDHは再灌流120分後に上昇した。(4)考察:肝はGSSGを肝外血中へ排泄することにより肝組織のGSSG/GSH比を維持していると思われた。肝汁中GSSGの変動は肝組織ATP,ECと相関し,ATP依存性の変動と思われた。血漿中GSSGは肝逸脱酵素によりもはるかに急速に上昇し,その意義について今後検討が待たれると思われた。2.上記と関連して肝代謝の代償期におけるhypermetabolic stateとサイトカイン(TNFーαとIL_1ーβ)の関係についてラットを用いて検討した結果TNFーαとILlーβ全身投与によって肝ミトコンドリアのredox stateは上昇しketogenesisは排制された。エネルギ-消費の増大によりECが低下した。
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