研究課題/領域番号 |
02454317
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研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
永末 直文 島根医科大学, 医学部, 助教授 (40117198)
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研究分担者 |
谷浦 博之 島根医科大学, 医学部, 助手 (80171833)
河野 仁志 島根医科大学, 医学部, 講師 (60145951)
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キーワード | 肝移植 / 肝阻血 / 再潅流障害 / カルシウムイオン / サイクロスポリン / FKー506 / ミトコンドリア / ケトン体比 |
研究概要 |
(1)免疫抑制剤の肝阻血・再潅流障害に対する効果・サイクロスポリンA(以下CsA)を3日間前投与した犬は90分の肝阻血ー再潅流によく耐え、コントロ-ル群に比べ有意に生存率を改善させうることを明らかにした。治療群でのGOT,LDH等の肝酵素の逸脱は著明に抑制され、またライソゾ-ム酵素の逸脱も抑制されることが明らかとなった。CsAに膜安定化作用があることを示唆したが、さらに電顕レベルの検討で、CsAはミトコンドリアの膨化、破綻を抑制することを示した。CsAが肝阻血そのものに対して防禦的に働くのか、それとも再潅流障害を軽減させるのかを肝動脈結紮モデルで検討した結果、後前の機序による可能性が高いことを明らかにした。また各種臓器の阻血障害を軽減することが知られているアロプリノ-ルおよびテスロイドホルモンとの比較研究により、GsAはこれらの薬剤より強い防禦作用があることを明らかにした。我国で製造された新しい免疫抑制剤FKー506にも同様の作用があることを証明した。(2)肝阻血ー再潅流障害における肝マクロファ-ジの役割:チモ-ザン投与により肝のクッパ-細胞を活性化した犬では生存率、肝組織障害ともにコントロ-ル群に比べ、強いことを明らかにした。その機序の一つとして、クッパ-細胞活性化は肝阻血ー再潅流において、より多くの活性酸素の産生を来たし肝障害を増悪させるものと考えられた。(3)肝阻血ー再潅流における組織内Ca^<++>の変動:肝阻血時には組織内のCa^<++>は有意の変動を示さないが、血流再開によって著明なCa^<++>の肝への流入が起こることを明らかにした。このように肝内に流入したCa^<++>は阻血時間が短い場合には、すみやかに正常化し、肝障害の程度も軽く、動物はよく生存するが、阻血時間を延長すると、いったん下降しかけたCa^<++>の濃度の再上昇を来し、強いミトコンドリアの障害、ひいては肝細胞の壊死を起こすことが明らかとなった。
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