研究概要 |
前年度報告した3β-OH胆汁酸のHPLC分析条件のもと,臨床例についてさらに検討した。1)健常人7例では血中3α-OH胆汁酸のTBAは1.28±0.87μmol/Lであったのに対し,3β-OH胆汁酸は全く検出されなかった。2)術後肝不全5例を測定すると,血中胆汁酸は3α型の総量として40.4μmol/Lないし141.5μmol/Lと極端な高値を示した。血中でも硫酸抱合型の占める比率が平均でも29%と異常であった。異常胆汁酸である血中3β-OH胆汁酸は,硫酸抱合型分画の遊離型が2例に1.11μmol/Lと6.02μmol/L,Glycine抱合型が5例中4例に0.15μmol/Lないし0.23μumo/L検出された。非硫酸抱合型は検出限界以下であった。術後の高度肝障害例では全例硫酸抱合型分画の3β-HO-△^5が出現することが判明した。しかし,このような内容の肝障害では黄疸の程度と3β-OH-△^5値とは一致していなかった。3)閉塞性黄疸8例では,血中3α-OH胆汁酸が減黄良好の4例で,総胆汁酸は術前161.2μmol/L,3日目10μmol/Lと著しく低下したのに対して,減黄不良4例では総胆汁酸量は96.9μmol/Lないし36.7μmol/Lと低下が遅延した。血中3β-OH胆汁酸は、減黄良好例4例中3例に術前にGlycine抱合型の3β-UDCAが1.85ないし7.53μmol/L検出された。しかし,3β-OH-△^5は検出しなかった。3日目でもこの3例はGlycine抱合型の3β-UDCAが1.84ないし24.25μmol/L検出され,そのうち24.25μmol/Lと最も高い症例では3β-OH-△^5も検出された。これに対し,減黄不良例では術前に非硫酸抱合型のfreeの3β-OH-△^5が0.07μmol/L,硫酸抱合型の3β-OH-△^5のGlycine抱合型が0.18,0.64μmol/L,Taurine抱合型が1.14,0.08μmol/L検出された。3日目では2例に3β-OH-△^5が検出された。すなわち,減黄不良例では術前あるいは3日目に3β-OH-△^5が検出されることがこの研究ではじめて判明した。
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