研究概要 |
従来,肝胆道疾患の各病態を解明するためにHPLCを用いた測定法では、3α-OH胆汁酸分画の変動に限局されていた。しかし,病態肝において出現するとされる3β-OH胆汁酸も同時に解析する必要が出てきた。本研究は,β-hydroxysteroid dehydrogenase(β-HSD)を固定化したカラムを新しく試作し,これを用いてHPLCで測定できれば,より簡易に数種類の3β-OH胆汁酸の同時分析(高感度完全分離)が可能となり,病態肝にける胆汁酸代謝の解明とその障害の程度を示す重要な新しい指標の一つになることを目的とした。最終的に血清中3β-OH胆汁酸の測定に絞った。 今回,3β-OH胆汁酸のうち高度肝障害例や肝癌などで出現するとされる3β-hydroxy-5-cholenoic acid(3β-OH-△^5)およびUrsodeoxycholic acid(UDCA)の3位のepimerである3β,7β-dihydroxy-5β-cholan-24-oicacid(3β-UDCA)の2種類の異常胆汁酸を取り上げ,Glycine・Taurine抱合型および遊離型に加え非エステル型と硫酸抱合型について臨床応用可能なHPLCによる一斉定量分析法の確立に成功した。HPLCの条件はβ-HSD固定化酸素カラムとCyclobond-I(250×4.6mm)分離カラムを装着したHPLCを用いてlinear gradient 60min,カラム温度60℃とし,この分離後に反応液0.3mMNAD^++20mM KH_2PO_4+1mM EDTA+0.05% 2-mercaptoethanolを流速2m1/minで流し,6種類の胆汁酸の分離定量に成功した。臨床例を測定した結果,1.術後肝不全例では,健常人では全く検出されない3β-OH-△^5の硫酸抱合型が検出された。 2.減黄術時における血中3β-OH胆汁酸の推移は,減黄良好例では非硫酸抱合型の3β-UDCAが減黄初期に検出され,また減黄不良例では3β-OH-△^5が検出され,減黄効果を予測する一指標になることが本研究ではじめて見出され,今後の診断・治療に役立つことが判明した。
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