研究概要 |
(1)担癌患者末梢血を術前術後に採取し、ILー1,ILー6,TNFーα,GMーCSF値を測定したところ、各サイトカインが高値である事が判明した。そこで術後1日目は3時間毎に、2日目以降7日目までは1日おきに、退院後は来院時に採血し各サイトカインの変動を検討した。その結果、TNFーαは術前からコントロ-ル群より高値を示し、さらに術後15時間と2日目にピ-クをもって産生される事が判明した。またILー1αは術後18時間と3日目にILー1βは21時間と5日目に、ILー6は24時間と7日目にピ-クを示した。GMーCSFは術後徐々に上昇する傾向が認められた。また再発がAFP、CEA等の腫瘍マ-カ-や画像診断でとらえられる前にTNFーαが上昇する傾向がみられ、TNFーαの腫瘍マ-カ-としての有用性が示唆された。 (2)胆石症患者においても同様の検討を行なったところ、各サイトカインのピ-クは担癌患者と同様の結果が得られたが、産生量は低かった。 (3)手術時に癌組織を採取、これを培養し、cell line化を試みた。組織は肝細胞癌、転移性肝癌を用いた。組織を採取後、RPMIー1640ー10%FCS培地にて細胞を浮遊し、これを37℃、5%CO_2下で培養した。約1カ月後より増殖の認められたものを継代し現在まで7株の細胞が得られた。この細胞株の上清中の各サイトカインを測定したところ、TNFーα,ILー6,GMーCSFがかなりの高濃度で検出された。これらはその特異抗体添加培養により、細胞数、生存率ともに抑制された。また、10%FCSの影響を除くため無血清培地(エスクロン、SPー02)で培養し、各サイトカインおよび特異抗体を添加後、上清中の各サイトカインを測定したところ、各サイトカイン間での相互作用が観察された。現在癌細胞のサイトカインによるauto crine増殖が注目されているが、我々の樹立した細胞株は、この事を研究するうえで最良のモデルであると思われた。
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