肺移植後の長期生存モデル作成のためには、的確な免疫抑制方法の確立が不可欠である。我々はこれまでに、cyclosporine、azathiopurineを、筋肉内注射、皮下注射、胃瘻造設による胃内投与などによって投与してきたが、免疫抑制剤の血中濃度の安定性の点から、筋肉内注射が至適投与方法であるとの結論を得た。 肺移植の実際においては、肺保存手技の確立が不可欠であるが、今回、イヌに比べ、よりヒトに近い霊長類である日本ザルを用いた長時間の肺保存実験により、その臨床応用の可能性について検討した。まず、遠隔地輸送を想定したサル肺保存溶器を作成した。この保存容器を用いて、サル心肺標本による24時間の両肺保存を施行後、同種左肺同所性移植を行った。移植肺の機能を検討するためには、実験期間中の確実な免疫抑制が必要であるが、上述の如き免疫抑制剤投与法により拒絶反応の防止をはかり、移植肺の機能を検討した。肺移植後、経時的に胸部X線写真を撮り、動脈血ガス分析、及び対側肺動脈閉塞試験を行ったが、移植肺は十分な機能を保持していることが判明し、臨床応用は可能と考えられた。今後、保存時間を48時間に延長して、より確実な保存手技を確立していく方針である。 また、保存肺移植による気管支肺胞洗浄液の性状に関する詳細な研究がなされていないことから、サルを用いた長期生存モデルを作成し、移植肺に及ぼす保存の影響について検討する予定である。
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