研究概要 |
(目的)肺移植において、移植臓器の長時間の遠隔地輸送における安全かつ確実な保存手技の確立が必要とされている現在、よりヒトに近い霊長類であるサルの保存肺移植実験モデルでの有用性を確認することが臨床応用上重要と考えられる。今回の研究において我々は、ニホンザルを用いた24時間肺保存の可能性と、同種肺移植における保存移植肺の機能低下の程度を評価することを目的とした。 (方法)ニホンザル18頭(体重9.0-12.0kg)を用いて計9回の左肺同所性移植を行なった。実験群を,1群:移植せず開胸のみの操作とした正常Control群(n=5)、II群:保存せず、左肺摘出後直ちに移植した移植対照群である非保存群(n=3)、III群:Ep4液による24時間保存の後移植した保存群(n=6)の計3群とし、II群およびIII群に対して移植直後、移植1週後に対側肺動脈閉塞試験を施行した。この結果とControl群の比較により、保存移植肺の機能を評価した。また移植1週後の対側肺動脈閉塞試験と同時に開胸肺生検を行ない、移植肺の組織学的所見を検討した。 (結果)II群2頭、III群5頭は術直後より移植側肺野の含気性は良好であり、開胸肺生検による組織学的検査では、急性拒絶反応における藤村の分類のI期が3頭、2期が4頭に認められた。術直後より移植側肺野の含気性が良好であったII群2頭、III群5頭に対して行なった移植直後、移植1週後の対側肺動脈閉塞試験においてIII群は酸素化能、心拍出量でControl群との有意差を認めなかった。また、II群、III群の平均肺動脈圧、心拍出量、全肺血管抵抗は移植1週後に回復傾向を示した。 (結論)移植直後、1週後ともに保存移植肺は、良好な機能を保持していることが示され、本方法での24時間肺保存は可能であることが判明した。
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