家兎胎仔を用いて2種の方法で横隔膜ヘルニアモデルを作成し、さらに胎仔期にその修復を試み、修復による肺低形成の改善の効果を検討した。〈方法〉1群(n=20):胎齢22日に子宮開窓法により胎仔の左胸部を露出、助門より胸腔内にシリコンを注入し、胎齢29日に帝切にて胎仔を回収した。2群(n=20):1群と同様の操作後、胎齢26日に胸腔内のシリコン塊を摘出し、胎齢29日に胎仔を回収した。第3群(n=30):胎齢22日に子宮開窓法により経腹的に横隔膜を穿破し胎齢29日に胎仔を回収した。第4群(n=20):第3群と同様の操作後、胎齢26日に経腹的にヘルニアを修復し、胎齢29日に胎仔を回収した。回収した得た胎仔の体重、肺重量、肺組織中DNA量、肺組織中サ-ファクタント量を測定した。3群、4群の肺組織中DNA量、サ-ファクタント量については測定中である。 〈結果〉生存回収は1群8羽、2群7羽、3群15羽、4群2羽であった。体重は対照を含め群間に差はなかった。肺重量・体重比では各群ともモデル群が対照群に比べ有意に低値であったが、とくに3群で著明に低値を示した。1、2群間に差はないが、4群は3群に比べ明らかに増加していた。DNA量は1、2群ともモデル群が対照群に比べ有意に低値であった。DNA当りのサ-ファクタント量は、1、2群ともモデル群が対照的に比べ増加している例が多かった。 〈結論〉1)胸腔内シリコン注入による横隔膜ヘルニアモデルでは、肺重量・体重比、肺組織中DNA量は対照に比べ有意に低下したいたが、DNA当りの肺サ-ファクタント量はむしろ増加していた。胎仔期のシリコン摘出により肺低形成の改善はなかった。2)横隔膜穿破による横隔膜ヘルニアモデルではシリコン注入によるモデルに比べ高度の肺低形成を認めた。胎仔期のヘルニア修復により肺低形成の改善が得られた。
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