研究概要 |
経頭蓋的超音波ドップラ-法(TCD法)を用い,低体温併用体外循環中の中大脳動脈平均血流速度(MCAーV)を測定し,体外循環中の血液ガス管理(αーstatおよびpHーstat管理)の脳循環系に及ぼす影響を分析した。対象は1990年8月から1991年7月までの開心術症例40例とし,種々の低体温下で,潅流量は一定とし,MCAーV,体温,潅流圧(MAP),PCO_2の4指標間の相関性について検討した。 結果:(1)αーstat管理による体外循環中,MCAーVは前値の57.3±8%に減少したが,人工肺内に炭酸ガスを添加してpHーstat管理とすると103.8±48.3%に増加した。 (2)αーstat管理では△MAPに対する△MCAーVは相関せず,pHーstat管理では正の相関をみとめた。 (3)体温とMCAーVの間の関係はαーstat管理下では正の相関をみとめたが,pHーstat管理ではみとめられず,MCAーVは低体温下でも高値を示した。 (4)低体温下の△PaCO_2に対する△MCAーV(PaCO_2ーreactivity)は体温変動と圧の相関をみとめた。 結論:αーstat管理は,20℃までの低体温下で体温低下に応じた全身潅流量調節を行わない場合,脱循環の自働制御機構の作働を維持させ,生理的かつ安全と考えられた。 pHーstat管理は,低体温下低流量潅流法を行う場合,脳循環維持上有利と推測したが,20℃前後の低体温下ではPaCO_2ーreuctivityは低下しており,その有利性を証明することはできなかった。
|