研究概要 |
昨年度までは潅流量一定の条件下で体外循環中の潅流圧、血液PaCo_2,体温の三変動因子と中大脳動脈血流速度(MCA-V)との関係を検討した。本年度は,α-statおよびpH-stat管理中の潅流量の変動に対するMCA-Vの反応について検討した。 平均年令41.7才の成人開心術症例10例を対象とした。 体外循環をα-stat管理で開始し,24〜28℃の中等度低体温とし,潅流量を2.4L/m^2/分から1.5L/m^2/分へと低下させ,その各々の時点でMCA-Vの測定を行った。その後,再び潅流量を2.4L/m^2/分に復帰させ,pH-stat管理に変換したのち,同様に潅流量の変動に対するMCA-Vの変動を観察した。 α-stat管理では潅流量を2.4から1.5に低下させてもMCA-Vの有意な低下はみとめられなかった。一方,pH-stat管理下では潅流量の低下に応じてMCA-Vの低下をみとめ,両者間に正の相関をみとめた。しかし,pH-stat管理では潅流量低下時も,α-stat管理の場合に比して,MCA-Vは常に高値を呈した。 以上より,α-stat管理では潅流量の変動が生じても安定した脳血流量を確保するためには有利と考えられた。pH-stat管理では脳循環自働制御機構の破綻により潅流量の変動に応じて脳血流量の変動も起りやすく,脳血流量/酸素消費量比のアンバランスを来す危険性が示唆された。しかし,常に脳血流量は高値であることから,低潅流体外循環では脳血流量を高く保つのに有用であろうと推測された。
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