研究課題/領域番号 |
02454338
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 潔 順天堂大学, 医学部, 教授 (10112707)
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研究分担者 |
宮島 雅一 順天堂大学, 医学部, 助手 (60200177)
須田 喜久夫 順天堂大学, 医学部, 助手 (00206559)
武田 信昭 順天堂大学, 医学部, 助手 (00171645)
新井 一 順天堂大学, 医学部, 講師 (70167229)
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キーワード | 先天性水頭症 / 先天性水頭症ラットHTX / コリンアセチル基転換酵素 / 神経成長因子 / 酵素免疫測定法 |
研究概要 |
これまでの先天性水頭症ラットHTXを用いた基礎的研究から、先天性水頭症による神経機能障害の成立にはシナプス結合を中心とした神経回路網の形成障害が大きく関与している可能性があることを報告してきた。本年度はコリン作動性神経系の発達分化とその生存維持に重要な働きを持つとされる神経成長因子に注目し、水頭症の進行がこれにいかなる影響を及ぼすかを動物モデルを用いて検索した。先ず、コリン作動性神経系の発達を把握する目的で、前脳基底野、頭頂ー後頭葉皮質、そして、海馬におけるアセチルコリン合成酵素:コリンアセチル基転換酵素の活性を測定した。その結果、生後3週齢の水頭症ラットでは、水頭症の影響を最も受けやすい頭頂ー後頭葉皮質において、その活性は著しく低下していた。しかし、その他の部位では当該酵素活性は対象動物のそれと有意差をみなかった。そこで、上記脳各部位の神経成長因子を酵素免疫測定法にて定量したところ、生後3週齢の水頭症ラットの前脳基底野では、対象動物に比しその値は低値を示したが、頭頂ー後頭葉皮質では逆に高値を示した。生後4週齢の水頭症ラットでは、頭頂ー後頭葉皮質でその値は更に高値を示した。前脳基底野における神経成長因子の減少は、コリン作動性神経の標的器管である大脳皮質や海馬からの神経成長因子の逆行性軸索輸送が、水頭症により障害を受けたものと推定された。更に、頭頂ー後頭葉皮質におけるその増加は、神経成長因子の逆行性軸索輸送が水頭症により障害されると共に、神経細胞近傍の神経膠細胞が活性化を受け、神経成長因子の分泌が促進された可能性も考慮された。今後、神経回路網の形成障害の回避に役立つ薬物治療の開発、さらには、先天性水頭症の遺伝子治療の開発に研究目標を置く所存である。
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