研究概要 |
本研究は、24R、25(OH)_2D_3投与による骨量増加作用の機序を、細胞レベルで明らかにし、ヒトの骨粗鬆症治療への応用の可能性を示唆したものである。24R、25(OH)_2D_3はヒトの血清中の濃度は1,25(OH)_2D_3の約50-100倍もあるが、生理的役割は明らかではない。しかし、我々は、この物質を薬物として投与すると骨量を増加させる作用がある事を発見した。ラットに投与すると、骨量は用量依存性に増加し、形成された骨の力学的性質は正常と同じであった。血清カルシウムはほとんど変化しなかった。このような骨量増加作用はウサギでも観察された。骨形態計測による分析では、1)破骨細胞数の減少と、2)骨芽細胞の骨基質合成増加が明らかになった。これが、本研究における最も重要な成果である。さらに、24R,25(OH)_2D_3の骨の細胞レベルでの作用の骨代謝疾患への応用の1つとして、エストロゲン欠乏による骨量の減少、すなわち、閉経後骨粗鬆症をとりあげた。ビーグル犬を使い卵巣摘出により骨粗鬆症モデルを作成し、この実験系にて24R,25(OH)_2D_3の投与が骨量の減少を抑制する事を明らかにした。骨の細胞レベルではエストロゲン充足状態と同様に、破骨細胞の数の増加を抑制し、骨芽細胞の骨基質合成能の低下を防止している事が明らかになった。24R,25(OH)_2D_3の骨量増加作用が、この物質に特異的に作用であるか否かは、今後の問題である。1)ビタミンD充足状態、すなわち1,25(OH)_2D_3による適切なカルシウウムの供給が必要である事、2)破骨細胞の減少、骨芽細胞の骨基質合成亢進という作用はともに、1,25(OH)_2D_3の骨作用と密接な関連がある事、などの事実は、24R,25(OH)_2D_3の作用が、1,25(OH)_2D_3の骨の細胞レベルでの効果を修飾する事により発揮されている事を強く示唆する。したがって、本研究の結果は単一の物質の作用を明らかにしただけではなく、ビタミンDの構造を修飾する事により、さらに強力な骨量増加作用のある物質が得られる可能性を示した点で極めて意義があった。
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