研究概要 |
(目的)破骨細胞の起源については未だ諸説あるが、いずれの説においても最初の破骨細胞が出現する軟骨内骨化初期における軟骨原基周囲の骨膜内のin vivo,in situの破骨細胞の形成過程や骨芽細胞との相関が形態学的には未だ明かにされておらず、この点を解明すベく研究を行った。 (研究方法)1.胎生15日のC3Hマウスの大腿骨軟骨原基周囲の骨膜を電顕用標本に作製し、破骨細胞とその前駆細胞を電顕的に観察した。2,妊娠14日のC3Hマウスの羊水中にPTH25単位を注入し、24時間後に大腿骨を摘出し、酒石酸耐性フォスターゼ(TRAP)反応を起こさせてから電顕標本を作製し、同様に破骨細胞や骨芽細胞を観察した。 3.胎生17日の中足骨の軟骨原基を取り出し、コラーゲン処理後、骨芽細胞様細胞と共存培養した。(成果)破骨細胞と骨芽細胞とは稀に極めて密に接していることもあったが、前破骨細胞は骨芽細胞とはあまり密に接しておらず、形態学的には骨芽細胞が果たして前破骨細胞の分化に関与しているのか疑問に思われた。また、軟骨原基の周囲骨膜の破骨細胞の前駆細胞をTRAPをマーカーとして追求した。最も幼弱な前駆細胞は核・細胞比が大きく、核は明るく、胞体には比較的小数のミトコンドリア、TRAP陽性のリゾゾームが存在した。この幼弱な前駆細胞は、諸家の報告している未分化のperivas cular cellの電顕像と類似しており、血液幹細胞、単芽球、前単球などの血液系細胞との類似点はみられず、破骨細胞の局所由来説を支持する所見であると考えた。以上の所見を内外の学会において3回発表、さらに英文論文として本年1月、Inter national Orthopedicsに投稿した。共存培養の実験はうまく成果が得られなかった。過去十数年来の成果をまとめて、本年10月日本整形外科学会基礎学術集会において、教育講演を行うこととなった。
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