脳・脊髄血管の薬物に対する反応性は、一般に他臓器血管のそれの1/20から1/30であるとされている。高炭酸ガス血症には著明にそして低酸素血症、カルシウム拮抗薬の影響を受けることが知られている。本年度は、生体内顕微鏡を用いて、Kチャンネル開口薬ニコランジルと、α_2-アゴニストであるデキサメドトミジン、そして新しい局所麻酔薬であるロピバカインの脳の微小血管に対する反応性を検討した。 1) ペントバルビタール麻酔された犬を開頭し、closed cranial windowを作成し、人工呼吸下でPaCO_235-40mmHg、PaCO_280-110mmHg、体温36.5゚-37.5゚に調節した状態で、薬物の作用を検討した。人工髄液に溶解されたニコランジル(10M^^<-3>〜10^<-7>M)を、体温程度に温めて、window下に投与して、顕微鏡から得られた画像をテレビ画面上に写しだして血管径を計測した。 2) ニコランジル(10M^<-3>〜10^<-7>M)は、100-200μmの脳柔膜動脈を、用量依在性に拡張した。200Hm以上の動脈も拡張したが、それは前者より弱く、10^<ー3>濃度のニコランジルでの拡張は、100-200μmで、平均33%、200μm以上では、23%であった。脳柔膜静脈の拡張は、動脈に比較して弱かった。この作用はメチレンブルーの前処置によって抑止された。また、デキサメドトミジンは、この10^<-7>M〜10^<-4>Mでは脳血管を収縮、10^<-3>では拡張を観察した。この作用は、α_2-アンダゴニストであるヨヒンビンによって抑止され、α_2-受容体を介したものであると推測された。
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