1.成熟ウサギの気道内に塩酸を注入し、成人型呼吸窮迫症(ARDS)様症状を発症させたうえ、金沢大学で開発した補充療法用サ-ファクタント(Surfactant CK)を投与した。その結果、血液ガス所見、生存率、肺組織所見などが好転し、ARDSに対するサ-ファクタント補充療法の有効性が強く示唆された。 2.自己の肺サ-ファクタントが欠如しているウサギ未熟胎仔に対し、段階的に濃度を変えたサ-ファクタントを補充し、換気力学や肺組織像を系統的に調査した。その結果、サ-ファクタントの濃度がある一定の値以下になると、生理学的作用が急激に消失する現象を見い出し、生理的臨界濃度という新らしい概念を提唱した。 3.肺サ-ファクタントのアポ蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を、ウサギの肺に注入したところ、ARDSに酷似した症状や肺組織像がみられた。この結果は、ARDSの成因に、サ-ファクタントの不活化が関与していることを裏付けるものと考えられた。 4.酸素中毒でARDS様症状を呈しているウサギの肺水腫液中には、肺サ-ファクタントの活性を阻害する物質が存在することを確認した。ウサギ未熟胎仔を用いた生物学的評価系で、肺機能障害が出現する阻害物質とサ-ファクタントの量の比を求め、ARDSに対する補充療法の基礎的資料を貯積した。
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