研究概要 |
ハロセン(2-プロモ-2-クロロ-1,1,1,-トリフルオロエタン)は、最も広く用いられている吸入麻酔薬の一つであり、ハロセン麻酔後の肝障害は麻酔科医にとって重要な問題である。発生機序のひとつとして、ハロセンが肝細胞中のチトクロームP-450により嫌気的代謝を受け,その際産生されるラジカル中間体が脂質過酸化を引き起こすという機序が考えられている。ハロセンが嫌気的代謝をうけて2-クロロ-1、1-ジフルオロエチレン(CDFE)と2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(CTFE)に代謝されること、その際にラジカルが産生されることは、in vivo,in vitroの反応系において既に明らかにしている。 本研究の目的は、ハロセンの嫌気的代謝に伴って脂質過酸化がおこることをペンタンの測定を用いて明らかにし、さらに他の吸入麻酔薬も脂質過酸化の可能性があるかどうか検討することにある。 第1編では、四塩化炭素の代謝中に生じるラジカル中間体が肝臓のミクロソームの脂質過酸化を引き起こし、その結果肝に障害をきたすことを踏まえ,この四塩化炭素とミクロソームの反応系を用いて、ペンタンがミクロソーム酵素系に起因する脂質過酸化の指標となるかどうかを検討した.その結果,ペンタンの測定による脂質過酸化の評価方法は,従来の方法より高感度で,特異性が高いことが示された。さらに測定条件の確率を行った. 第2編では、この確立した方法を用いてモルモット肝ミクロソームにおけるハロセンの嫌気的代謝にともなって脂質過酸化がおこるか否かを検討した.その結果,ハロセンによりモルモット肝ミクロソームの反応系からペンタンが生成されることを認めた.モルモット肝ミクロソームにおけるハロセンの嫌気的代謝にともなって脂質過酸化がおこると結論した。 第3編では,おなじくこの確立した方法を用いてモルモット肝ミクロソームにおけるセボフルレンによって脂質過酸化がおこるか否かを検討した.その結果,セボフルレンによりモルモット肝ミクロソームの反応系からペンタンが生成されることを認めた.その結果,セボフルレンによる肝ミクロソームの脂質過酸化の可能性が示唆された.
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