研究概要 |
本研究では心肺蘇生患者(CPR群)を対象に,血糖値の脳障害に及ぼす影響を検討する。平成2年4月1日より平成3年3月10日までに心肺蘇生を施行した37例中,72時間以上生存したものは6例であり,22例が心肺蘇生不能例または24時間以内死亡例であった。72時間以上の生存症例が少ないので,血糖値による群分けは行なえない。脳血流量と脳酸素消費量は対照群46±2,3.12±0.17ml/100g/minに対して,CPR群で4ー8時間では31±4*,1.78±0.31*,8ー48時間では59±12,2.19±0.71ml/100g/minとなった。脳血管抵抗は対照群1.99±0.09mmHg/ml/100g/minに対して4ー8時間,8ー48時間ではそれぞれ2.93±0.36*,1.57±0.24mmHg/ml/100g/minとなった。脳波は回復例では早期より速波がみられたが,高度意識障害例ほど徐波化した。聴性脳幹反応は回復例では全経過を通して正常であったが,高度障害例では異常波形を示し,各波の潜時延長もみられた。CT所見では脳槽および脳室系の狭小化,脳浮腫,大脳基底核や中脳の低吸収域の出現,脳溝に沿った著しい造影効果を認めた。脳障害に関与する脳脊髄液(CSF)のアミノ酸は本年度購入の高速液体クロマトグラム・電気検出器システムにより,その測定法を確立した。中枢神経系に異常のない患者16例で脊椎麻酔時にCSFを採取し,これを対照群とした。CPR群はCT検査で頭蓋内圧の異常高値を予測させない症例を選んだ。対照群とCPR群のアスパラギン酸はそれぞれ0.7±0.2,1.9±0.4*グルタミン酸は1.7±0.2,6.2±3.7,グリシンは1.2±0.3,2.6±0.6,タウリンは5.8±0.4,15.1±2.2*,アラニンは31.9±1.6,90.4±18.8picomol/μlであり,それぞれ対照群に比べ高値を示したが,グルタミン酸とグリシンは有意となっていない。 平成3年度に症例が増えれば,血糖値を120mg/dl以下と150mg/dl以上の群に分け,同様の検討を行なう。
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