研究概要 |
集中治療部に於いて、気管内挿管下に機械的人工呼吸を受けている患者のうち、肺酸素化能が著しく障害され、100%酸素吸入でも動脈血酸素飽和度が95%に達しないもの10人を対象とした。全身状態が安定している時に、まづ吸入酸素濃度(FiO_2)を100%として、15分間換気した後動脈血を採取・ガス分析を行いAーaDo_2を算出した。次いでパルスオキシメ-タによる酸素飽和度(SpO_2)監視下にFiO_2を次第に下げてゆき、SpO_2がはじめて90%になったときのFiO_2をFi90として記録した。 このFi90と従来の肺酸素化能の指標であるAーaDo_2およびRespiratory Index (R.I.=AーaDo_2/PaO_2)との相関を検討した。 その結果、 1)全例でFiO_2の低下につれてSpO_2の低下が見られ、Fi90を決定することができた。 2)Fi90(X)とAーaDo_2(Y)との間には、Y=721.385X+121.585(r=0.938,p<0.01)Fi90(X)とRespiratory Index(Y)との間には、Y=9.302Xー1.637(r=0.949,p<0.01)といずれも有意の相関がみられた。 肺シャント率との関係については、スワンガンツカテ-テルを挿入留置した症例数が十分でなく、今回は統計学的検討を行うことができなかった。 以上の結果から、ベンチレ-タの吸入酸素濃度計とパルスオキシメ-タの値のみから、重症呼吸不全患者の肺酸素化能を非侵襲的に知ることができる可能性が示唆された。このことは患者のみならず、医療者にとっても極めて有益なことと思われる。
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