研究概要 |
【目的】セボフルレン麻酔下における硫酸マグネシウムおよびアデノシンの心刺激伝導系に及ぼす効果をHis束心電図を用いて検討した。 【方法】21頭の雑種成犬をペントバルビタ-ルおよびベクロニウムにて麻酔し、人工呼吸下に心電図第II,V_5誘導をモニタ-した。His束心電図用カテ-テルを右大腿静脈より右心腔内に挿入し、His束心電図を記録した。右開胸により心膜を切開し、心房ペ-シング用電極を右房壁に固定し、心房ペ-シングを行った。まず、セボフルレン麻酔そのもののHis束心電図に及ぼす効果をみるために、21頭の犬においてセボフルレン吸入前,2.5%および5%セボフルレン吸入下における自己調律時および右房ペ-シング時のHis束心電図を記録した。つづいて、セボフルレン2.5%(約1MAC)吸入下に、10頭の犬には硫酸マグネシウム 30,60,90mg・kg^<ー1>をbolus投与し、自己調律時および右房ペ-シング時のHis束心電図を記録した。別の11頭の犬にはアデノシンを0.1,0.3,0.5,1.0mg・kg^<ー1>・min^<ー1>の速度で150秒間持続投与し、自己調律時および右房ペ-シング時のHis束心電図を記録した。 【結論】1.セボフルレンは2.5%および5%でも、P波から低位右房電位までの時間(PーA時間),低位右房電位からHis束電位までの時間(AーH時間)およびHis束電位から右室電位までの時間(HーV時間)に有意な変化をもたらさなかった。2.硫酸マグネシウムはPーA時間に有意な変化をもたらさず、用量依存性にAーH時間およびHーV時間を延長させた。ペ-シング中においても刺激からHis束電位までの時間(SーH時間)およびHーV時間を用量依存性に延長させた。3.アデノシンはAーH時間を用量依存性に延長させたが、PーA時間およびHーV時間には有意な変化もたらさなかった。ペ-シング中においてもSーH時間を用量依存性に延長させた。
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